岸田首相の講演を受けて思ったこと

岸田首相が、早稲田大学大隈講堂で講演をされ、休日にもかかわらず非常に盛況だったようです。広島で開催されたG7サミットの舞台裏のような話が聞けたのなら、それは参加した学生の方々にとって非常に貴重な経験だったのではないでしょうか。私は参加していないものの、以下いくつか思うことを述べたいと思います。

まず、「まさか」というのを強調された講演だったようですが、こと法律に関しては、「まさか」というのは好ましい発想ではありません。例えば、刑法の基本中の基本として、「罪刑法定主義」と「構成要件」という考え方があり、何が犯罪であり、どういう意図と、その意図に基づいたどういう行為が、その行為自身を犯罪たらしめるのかということは「あらかじめ」法律で定められている必要があります。もちろん起こりうるすべての事態を前もって予測することは不可能ですが、刑法以外の法律でも基本的に考え方は同じだと思います。

早稲田大学の学生の方たちが、たとえ日本の現首相の講演であろうと、講演の中身のすべてを無批判に受け入れてしまうなどということが決してないことには全幅の信頼を寄せています。ただ、講演では冒頭の「つかみ」が非常に大事です(私の恩師のお一人である教授のお教えです)。同時並行の広末氏の件をネタにしていただきたかったと申し上げるのはお立場上酷であるにせよ、講演の「つかみ」までも面白かったのだろうなというのは雰囲気としては伝わってこず、そのことにより結語としてはいたって「月並みなメッセージ」へと着地されてしまったのかなと勝手に推測しています。

いずれにせよ、早稲田の多様な講義と頻繁に開催される著名人の講演を積極的に聴くことにより、どういった講演(スピーチ)が「良い講演」なのかを判断する自分なりの「視座」を磨いていき、それをご自分が人前で話す局面でも大いに活用していくことこそが重要です。

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