「矢面に立つ」ということ

かすみがうら市とその周辺地域に、早大合格者の多い土浦一高と江戸川学園取手高校の生徒の方々や、潜在的にそうである方々も含めた早大志望者が、実際にどれくらいおられるのかを正確には把握できないままこの講座を開設しています。

ふと思うのは、こういった茨城県の最上位進学校に通っている方々であっても、つくば市や土浦市の方でなければ、実際に早稲田を受験するのは「矢面に立たされる」ようなことなのかもしれません。

私は高3の時、松戸の河合塾に通っていました。そこでの「早大現代文」の先生は前列の生徒を指名して答えを求める方でした(先生ご自身は非常に良い方でした)。私はやはり遠くから通っていたので、私が着く頃の教室はすでに前列しか空いていません。それで、前列に座り毎回指名されることになります。

これこそが、私にとっての「矢面に立たされる」という原体験でした。しかも初回の授業時に指名されて、間違えてしまいました。その年に早稲田は受かりませんでしたが、この体験が早稲田に入ってからも、今でも活きています。

頭脳とキャリアの面で非常に秀でた方たちは、すべての方がそうだとは言いませんが、概して「リスクを避ける」性向が極めて強い方たちです。私はこのことを身に染みて理解しています。知識が多くなれば、当然何が危険かを察知する能力も高まるので、このことはある意味自然なことなのかもしれません。経歴も「積み上げる」ものですし、「プライドと恥」の問題もあるでしょう。

ですが、「早稲田出身者」がそれで良いのでしょうか。早稲田大学の創設者であられる大隈重信は「失敗に打ち勝つ」ことの重要性を強調されておられます。

国学院大学で学ばれている歌手の相川七瀬さんが、「ゼミの場で叩かれる」という体験のタフさを慨嘆された記事を拝見しました。もちろん早稲田に入った方も同じようなことを、もしかしたらより甚だしい程度で体験することになるのはまず間違いないでしょう。

茨城県は、都道府県の魅力度ランキングで最下位の常連どころか殿堂入りレベルですが、「早稲田大学学生の出身者数ランキング」で実はかなり上位にいます(一都三県と、愛知県・兵庫県に次ぐ)。

常陸国の鹿島に生まれそこで没し、室町時代に活躍した伝説的剣豪である塚原卜伝(つかはら ぼくでん)は、足利将軍家や守護大名にも剣術を指南しました。塚原卜伝は単に生涯無敗であるだけでなく、「矢傷6つ」を除いては、剣で斬られたことがなかったと記録されています。本当かどうかはわかりませんが、私は自分の家の先祖が塚原卜伝の弟子だったと聞いたことがあります。

私も一応、先祖が塚原卜伝の弟子だったという前提で、それに恥じないようこれからも生きていくつもりですし、茨城県の魅力度ランキング最下位についても、これほどオイシイことはないと思っています。

「矢面」に立って、適当なリスクを甘受した方がむしろ安全で、得るものも多いのかもしれません。

追記:2022年度の都道府県魅力度ランキングでは、茨城県は46位で、大隈重信ご出身の地である佐賀県が最下位で複雑な気持ちになってしまいました。

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